振袖って?
振袖とは袖の長いきもののこと言い、未婚女性が着用する最も格式高い(第一礼装)きものです。
袖は最も長いものでおよそ3尺(約114㎝)、くるぶしまで袖があります。
振袖には手描き友禅の技法で四季の草花や鳥獣、風景などが描かれています。
さらに、金箔や刺繍を施したりと、品格を重んじた華美な柄付けになっています。
成人式、結婚式(花嫁・出席)などの晴れの舞台に着用されます。
袖丈の長さにより大振袖・中振袖・小振袖の3種類に分けられます。
振袖は恋愛観の象徴だった?
江戸時代の小袖
振袖が今のように未婚女性のきものとなった事の1つに、江戸時代初期の踊り子の風俗が上げられます。これは袖を振ると愛情を示す、袖に縋(すが)ると哀れみを請う、などといったもので、それを未婚の娘たちが真似をして大流行したため、振袖は未婚の女性のきものという習慣が出来上がったと言われています。また、袖を振るという仕草から、厄払い・清めの儀式に通じるとも考えられていました。結婚式や成人の日などに振袖を着用するのは、人生の門出に身を清めるという意味を持つようです。このように昔から振袖は人との縁・魂を呼び寄せ、厄払い・お清めに通じると考えられていました。
昔は振袖を男女ともに着用していた?
振袖の特徴である大きく脇があいた袖は、元々大人に比べて体温が高く、動き回ることで熱気を発し易い16、7歳以下の男女・子供の体温を一定に保つために作られたものでした。当時はこれを「脇明け」と呼び袖丈を短くすること(留袖)はなかったようです。このように、装飾的な意図を重視したものではなく、あくまで実用面に重点がおかれました。 しかし時代の流れとともに実用面より装飾的な面を重視するようになり、振袖は女性が愛情表現をするために使用されるなどユニークな一面を持ち始めました。そして、江戸時代後期には振袖は子供や未婚の女性が着用するものとして定着しました。
振袖の種類は3種類?
振袖には3種類あるとされていて、大振袖・中振袖小振袖と言い、それぞれ以下のように使い分けると良いとされています。
大振袖: | 紋を5つ付け(五つ紋と言います)で全面に柄をあしらった(絵羽模様)物が正式とされますが、現在では紋は省力されることがほとんどです。以前は結婚式で花嫁が着用すること主でしたが、最近は成人式にも着用することが定着しました。以前は成人式で着用する振袖は中振袖だったんですよ。現在、振袖と言えばこの大振袖のことを言います。 |
中振袖: | 結婚式の出席や成人式などの正式な儀式の場に着用します。特に結婚式などは、黒っぽい服を着ている人が多いので、華やかさを足す意味でも好まれます。大振袖に次ぐ礼装で、袖丈の長さは2尺(76㎝)前後です。昔は成人式などの儀式には中振袖が一般的でしたが、現在は女性の身長が昔と比べ格段に伸びたことなどから市販されている振袖のほとんどが大振袖となりました。 |
小振袖: | 小振袖 |
お誂え、レンタルどちらにするか決める前にまずはお母様の振袖を見てみましょう
来年成人式をお迎えになるお嬢様、振袖を誂えるかレンタルにするかお悩みのことでしょう。
でも、どちらにするか悩む前にまずお母様の振袖をご覧になることをお勧めします。
お母様の振袖は古いから、時代遅れだからと決めつけないで、まずご覧になって下さい。
ほとんどのお嬢様が今まで振袖いやきものをお召しなる機会はほとんどなかったのではないでしょうか。
どういった振袖がいい振袖、似合う振袖かわからないと思います。
ですから、まず、お母様の振袖をご覧になって実際に試着してみて下さい。
すると、振袖をお召しになった時のイメージがわかると思います。そして鏡にうつるご自分の姿を見てお母様の振袖が似合うかどうか判断して下さい。
私どもがお母様の振袖をまずご覧になることをお勧めするのは、振袖のイメージを分かってもらうためだけではありません。実際にお母様の時代にお誂えいただいた振袖は、今の振袖より加工(柄などの細工)が重くかったり、手描き友禅の本格派の振袖であったりと良い物が多いからです。
現実にここ数年、お母様の振袖を成人式にお召しになるお嬢様が増えています。
今年の成人式も6人のお嬢様がお母様の振袖をお召しになり、寸法直しや帯、帯しめ、帯揚げ、草履・バッグといった小物を変えられるお手伝いをさせていただきました。
4名の方のお写真を紹介させていただきますが、全く古いという印象はないと思いませんか。
振袖は日本の伝統美です。どうか受け継いでいって下さい。
お母様の振袖をお召しになる時の注意点
実際にお母様の振袖をご覧になって、試着なさって成人式にお召しになる時の注意点をお教えいたします。
お母様と背格好が同じくらいなら問題はないのですが、お母様と比べて背が高いお嬢様が多いので身丈や裄(背骨のグリグリから手首までの長さ)が短くなることです。
たいていの場合は、洗い張り(仕立て上がったきものを解いて、仕立ての際についた筋などを消すこと)をして、もう一度仕立てなおすとお召しいただけます。
ただし身長差が大きい場合や体形が大きく違う場合は出来ない場合があります。もう一点は、袖丈はお誂えになったお嬢様よりは少し短くなることはご理解ください。お母様より背が低い場合は、問題はありません。
次の問題点は、振袖についたシミや汚れです。お母様がお召しになった後、お手入れをしておしまいになっていれば問題ないのですが、その時はシミや汚れがないと思っておしまいになっていて、いざ出してみると振袖にシミがある場合がほとんどです。そういった古いシミは、普通のシミではなく黄変といって生地の変色で、普通のシミ抜きでは落ちません。汚れが黄変の場合は、小さいなら黄変抜きをして直しますが、頑固なもの大きなものは刺繍をしたり、金箔をかけたりして直してお召しいただけます。目立った汚れがない場合でも、一度丸洗い(きもののドライクリーニング)をしてからお召しになることお勧めします。
「ふくらすすず」
今の振袖とお母様の時代の振袖との一番の違いは、袋帯の長さです。お母様の時代は、振袖の帯結びは皆さん「ふくらすずめ」と決まっていましたが、今は一人一人の個性を大切にしそれぞれのお嬢様になった変わり結びをするため、お母様の頃と比べると帯の長さが40〜50センチ長くなっています。もちろん、お母様の帯をそのままお使いになっても問題はありませんが、新しくお誂えになったお嬢様と比べると帯結びが小さくなることをご理解ください。帯を変えることで、雰囲気は全く異なるものになります。帯は安いもので3万円くらいからあります。帯を変えることでお嬢様の個性を引き立たせることができます。
お母様の時より帯が長くなった分、お嬢様の雰囲気に
合わせて人一人個性的なおびむすびができます
帯しめ、帯揚げ、半襟、重ね衿の色や形、柄も豊富になりました。また、ぞうり・バッグもお母様の頃とずいぶん形が変わりました。小物を変えるだけで雰囲気は変わります。お母様の振袖をお召しなるとお決めになったら、振袖についているシミや黄変の処理、袋帯、ぞうり・バッグといった小物についてご相談下さい。
お誂えになるかレンタルにするかお悩みの方
振袖をお誂えになるかレンタルにするか?お悩みのお嬢様、お母様がたくさんいらっしゃると思います。どちらにするかお決めになる時の参考として、きものの専門家である私どもから一言アドバイスさせていただきます。
私どもの店ではレンタルはやっていませんが、新聞に入る折り込みチラシなどを見ているとレンタルなら39,800円からあるようです。値段を見ると安いので専門家の私どもでもビックリです。私どもと取引のある貸衣装専門店「タカミ」さんに聞いたり、インターネットで調べると、レンタルの平均価格は20万円くらいのようです。
「私は振袖には興味がない。絶対に成人式の時に一度着るだけ」というお嬢様は、レンタルでもいいでしょう。成人式以外でも、大学の卒業式・友人や親せきの結婚式など成人式以外でも振袖を着ようかなとお考えの方は、レンタルよりお誂えになった方が断然お得です。レンタルなら1度お召しになるだけで、あくまで平均ですが約20万円かかります。もし成人式以外にも振袖をもう1回レンタルなさるとレンタル代だけで約40万円、かなりいい振袖がお求めいただけます。 頭に入れておいていただきたいのが、レンタルも基本の値段はありますが、小物などもいい物を選ぶと追加料金が発生します。安い振袖のレンタルが悪いというわけではありませんが、振袖自体が古いものであったり、小物も最低ランクのものであることは間違いありません。
レンタル振袖のいいところもあります。それはレンタルされるたびに違う振袖をお召しになれることです。
最後に一言、お誂えになる場合でも、レンタルなさる場合でも、値段の高い安いで振袖の良さが決まるわけではありません。お嬢様に一番似合う振袖が一番の振袖です。どうか値段に惑わされないで下さい。
それから、レンタルされる場合は特にですが、なるべく早く振袖を見に行って下さい。安い振袖、良い振袖はすぐになくなります。なるべく早い時期にお決めになることをお勧めします。
私ども専門家だけでなく、実際に成人式で振袖をレンタルされたお誂えになった方の貴重な意見がインターネットのYahoo!知恵袋にありました。振袖をどうするかお悩みの方にはとても参考になると思いますので、載せておきます。参考にして下さい。
成人式についてご意見お聞かせ下さい。
振袖を着た方、予定している方どうされましたでしょうか?
来年、娘が成人式です。私は私がかつて成人式で着た着物を着てほしいと思っています。
でも、本人は自分で選びたいと
いうので悩んでいます。経済的にも苦しいですが、もしレンタルすると大体いくらぐらいが相場でしょうか?
1回きりではなく、謝恩会やなんやでこれからも着る機会があるなら、買った方がいいのかとも
考えています。アドバイスお願いします。
ベストアンサーに選ばれた回答
今年の成人式で、レンタルの振袖を着ました^^
元々、母始め親類に振袖を持ってる人がいなかったので最初からレンタルのつもりでいました。たった1日(しかも数時間)のことに何十万も出してあげられない!と母に言われ、私も、そんなに出してもらうのは悪い><と思ったので、着物・小物・前撮り撮影・当日着付け・ヘアメイク...全込10万位で借りるつもりで着物屋さんに行きました。(成人式1年前からかなり色々な所から案内がきていて、カタログ掲載の物は全込10万前後だったので。)
いざ行ってみると、カタログの物は品切れと言われ(成人式1年前に行ったのに...)それじゃあ、と思い探しても10万前後だと素敵な着物はなかなかありません。小物なども、一番下レベルのものばかりで、少し素敵なのを選ぶと、すぐに+料金発生とのこと。
いっそのこと20万までレベルを上げてみたら、着物も小物もかなり豊富な種類から選べました。(ちなみに親からはレンタル代が成人式のお祝いということで10万出してもらい、あとの10万は自分で払いました^^;)
もっと色々な着物屋さんに行けばよかったのかな、と思いますが自分の好きな着物をレンタルしようとしたら、どこも大体20万前後かなと思います。友人も、みんなそのくらいでしたので...かなりピンキリだとは思いますが、20万前後で考えていた方がいいかと思います。(レンタルだと、基本的にはどこも前撮りや当日着付けなど全込だと思いますよ^^)
しかし、せっかくお母様の着物があるなら、それを着たらいいのに!と思ってしまいます。着物は、帯や髪飾りなどでガラッと雰囲気を変えることもできるので、もし帯など小物を変えることで娘さんのイメージに近づくなら、ぜひ、お母様の着物を着ることをオススメします^^
でも、一生に一回の成人式なので、自分の好きな着物を着たい!という気持ちも分かりますが^^;笑
来年、素敵な成人式を迎えられるといいですね★
【追記】
それから、レンタルなどをお考えであれば、早めの決定をおすすめします^^
着物屋さんによると、成人式過ぎた頃が一番混むらしく、現に私が去年の成人式後に行った時はかなり混んでました。途中、夏頃などに新作を入荷することもありますが、レンタルの場合はいい物ほどどんどんなくなっていきます。
私も母のは気に入らなかったのでレンタルで借りました。必要な物はお腹に巻くタオルと着付け用の紐、髪飾り以外全てそろっていて、だいたい10万前後(安いのは8万前後)だったと思います(2年前。都内・大手のお店での価格)。
去年のデザインか今年の新作かで値段が違ったような・・・。レンタルは一回きりではなく、その後2年間は無料で借りられるというサービス(卒業式には袴が安く借りられる)と、写真館での撮影・着付け・ヘアメイクが無料になる というサービス付きでした。また、着た着物は気が変わったら後日、レンタル料に+αして買うこともできました(もちろん返却するときまでに言わなければいけませんが)。私は結局写真館での撮影数日前〜成人式翌日まで借りただけで購入はしませんでした。
気に入った着物が着られてとても良かったのですが、後からたまたま地元のリサイクルの着物屋さんを通りかかったときに似たような着物が5万円で売られていて、帯にこだわりは無かったのでそれを買っても良かったな・・・と思いました(サイズが合ったかどうかは分かりませんが)。もしお近くにそうゆうお店があるようでしたら先にのぞいてみるのもいいかもしれません。
あと、レンタルといってもそうたくさん在庫があるようではないみたいで、5月くらいにいったら思ったより枚数が無く、3件まわってやっと1枚「これだ!」というのがあった という感じで、危うく気に入った着物が着られなくなるところでした(私が流行のデザインを好まなかったのもあるかもしれませんが)。
着物を借りる時期は年々早くなっているそうですし(早い人は1年前とか)、レンタルをお考えならちょっと急いだ方がいいかもしれません。
私は成人式は3年前でした。どんな高い着物より親のを着てる友人がかっこよく見えましたよ!すごく素敵な事ですよ。その後友人は車も買っていましたし、しっかりしてるな〜と思ったのを覚えています。よほど似合わない限りはお母さんの物を使うのがいいのではないでしょうか。
ちなみに私の場合は母の振り袖は残っていなかったのですが、帯はあったのでセット物でなく、着物と小物を買いました。卒業式、友人の結婚式の予定もありましたので、レンタル代を考えると買ったほうが安いと判断して購入しました。選ぶ時は「母が私の事は分かってますから。」と結構任せていました。年が上な分目は肥えてますし、値段も高いので失敗したくなかったからです。でもお互いが納得するように、普段着物を見慣れていない私の為に何回もお店に一緒に行ってくれました。母も最終判断は私にさせてくれましたし。親も私も納得した形で買いました。
確かに高いですし使う時間は少ないですが、大切な行事に使うので思い出に残り大切にします。
私は成人式の時に振袖を着ました。最初は母方の叔母のお下がりをもらうつもりでしたが袖を切ってしまったとのことで、諦めてレンタルしようと考えていましたが母方の祖母が草履・バッグ以外をすべて買い揃えてくれました。
成人式と卒業式の2回着ました。友人は結婚式で着ている子もいました。(私には娘がいるので、次に着てもらう予定です)お母様の成人式で着た着物なんて素敵ですよね。
私も母の訪問着や付け下げを譲り受けました。着物のデザインもずいぶん変わってきているようですが髪型や小物を工夫すれば、いつまででも着れるのでぜひ、娘さんに着てもらいたいですね。
実際に振袖をご覧になる時の注意点
お誂えになるかレンタルにするかお決めになって、振袖を見に行かれる時の注意点をいくつかアドバイスさせていただきます。
カタログやDM、雑誌などで好みの色や柄をじっくり検討して下さい。
皆さんのお宅にもたくさんのカタログや
DMが届いていると思います。
いろいろとご覧になって
着てみたい振袖を探してください
はじめて振袖を選ぶときは、誰にでもとまどいがあります。洋服のように雑誌などの情報も多くないし、何を基準に選べばよいのか分からないというお嬢様も多いことでしょう。そんな時は、まずはカタログや毎年発売される振袖の雑誌を見て、どんな振袖があってどれくらいの価格などの知識をつけてください。
大切なのは、難しく考えないこと。洋服の雑誌を見ている時、ウインドショッピングをして洋服を見ている時と同じように、カタログや雑誌を見て、気軽にスキ、キライ、この振袖が素敵と直感で決めて下さい。いろいろなカタログや雑誌を見ているうちにお嬢様の好きな振袖の色や柄が分かってきます。
このようにして、自分なりの着てみたい振袖のイメージを持った上でお店に行くようにするとお嬢様が気に入って、一番お似合いになる振袖が早く見つかると思います。
いざお店に行かれるときの注意点
私どもの店の振袖展です。
色々な色・柄の振袖が
多く揃っています。
まずは試着それが似合う
振袖探しのスタートです。
ゆかたを見に呉服屋さんに行かれたお嬢様は多くいらっしゃると思います。でもきものを見るために呉服屋さんに入ったことのないお嬢様がほとんどだと思います。多分、初めて振袖を見に展示会へお出かけになると、振袖の数、店員さんの多さなどに驚かれることと思います。お嬢様はご存じないかもしれませんが、一昔前のデパートのように、店員さんがいろいろと聞いてくると思います。その時にちゃんと自分の試着してみたい振袖の色や柄を伝えることが大切です。洋服のように自分の好みや似合うものが十分に分かっておられないことでしょう。店員はきもののプロです、好みを伝えることでお嬢様に合う振袖を出してくれるはずです。まずはそれを試着して、鏡に映る自分の姿を見て似合うかどうか判断してください。もし、好みの色や柄がイマイチと思った時は、店員さんに「どんな振袖が私に似合うと思いますか」と聞いてみたらいいと思います。お嬢様が思いもしなかった色や柄の振袖を出してくれるかもしれません。嫌がらずにそれも試着して下さい。似合う振袖を見つけるきっかけになります。
お店へ出かける時に一番注意していただきたこと。大きな会場の展示会は振袖の数も多く、店員も多いです。中には最近話題になったタケウチのような悪質な店もあり、買うまで返してくれない店もまだあるようです。そんな時は、携帯電話が鳴ったふりをしてとりあえず店から出る。それも無理な時は、とりあえずローンなどの契約をして、お帰りになられてからクーリングオフして下さい。
もう一つは、お母様やおばあ様と一緒にお出かけになることをお勧めします。理由は、お嬢様のこと一番知っていて、やはりきものの知識は豊富です。好みの色や柄はお嬢様と違うことが多いですが、お母様やおばあ様の勧める色や柄も試してみると驚くほどお似合いになることがあります。無理やり売りつけられたり契約させられる可能性もグンと低くなると思います。
まずは色を決めましょう!
同じ色でもトーンによって印象はさまざま。鏡の前で顔うつりの良い色を探しましょう
同じ赤でも朱系とワイン系でこんなに色合いが違います。
お好きな色の振袖の色調が違うものを試着して
似合うトーンを見つけて下さい。
振袖を選ぶとき基本的には似合わない色はないと思って下さい。ですから、まずは着てみたい色を試着して下さい。例えばお嬢様がお召しになりたい色が赤とすると。ひと口に赤と言ってもローズ系、朱系、ワイン系など赤といっても振袖の赤は実に多彩です。もちろん緑や青も黄色もピンクや白でさえも同じことが言えます。
問題は色調、色のトーンなのです。着てみたい色を絞り込んだら、いろいろなトーンの振袖を実際に鏡の前ではおってみて顔うつりの良い色を選んで下さい。これは似合う色を探すカラーコンサルティングの方法と同じです。似合う色の振袖をはおると、顔の色が一瞬にして明るくなり、顔のラインもきれいに見えます。経験がなくても、何枚か試しているうちにピンとくるもの、完成にひびくものがきっと見つかりますよ。
色によって雰囲気は全く変わります。
このお嬢様は、白い振袖をお選びになりました。
色を絞り込んだら柄の位置をチェック
全体のバランスをじっくりと見ることが大切です。
すっきりと美しく振袖を着こなすためには、柄の位置が大切なポイントになります。全身に柄がちりばめられているものは別ですが、特に上前にアクセントがあるものは自分自身の身長に対してバランスの良い位置に柄がくるかどうか必ずチェックしましょう。これもお気に入りの振袖を2、3枚に絞り込んでから比較してみるとよくわかります。
この時、あまり姿見に近づきすぎないで、少し離れて(2〜3メートル)見てみると自分自身の姿が客観的に見られて正しく選べます。
お好みの振袖が決まれば、
帯や小物を合わせて試着完成。
実際に振袖をお召しいただいた時と
ほとんど変わりません。
実際に、きもの屋さんやレンタル屋さんへ行かれる時の服装について、少し意見させていただきます。
試着なさる際は、きものは襟元があいているものですから、なるべくタートルネックなどは避けた方が無難です。洋服の地色によって、きものの柄ゆきがよくわからなくしまうこともありますので、Vネックなど襟元があいたものがお勧めです。また、フレアースカートなどフワッとしたものも避けられた方がいいと思います。
もう一点、振袖や帯小物がお決まりになったら、必ずたびは試着されることを勧めします。足の形によってサイズが変わってきます。色々な形のたびがあるので、試着してピッタリのものをお選びください。オシャレは足元からです。
初めての振袖の購入。帯や小物はすべてセットになっているものがお薦めです。
振袖を着こなすためには、振袖と帯だけでは無理です。帯揚げや帯〆といった帯周りの小物やぞうり・バッグだけでなく、長襦袢や肌着といったインナー、着付けの小物などが必要です。一点一点、買い揃えていくよりもプロが選んだ小物はもちろん、仕立て代までがすべてセットになっているフルセットの振袖にするのが一番合理的です。まず基本になるものはすべてをセットで完璧に揃え、後で装いを変えてみたい時に小物を買いたすのが上手な振袖のおしゃれの楽しみ方でしょう。
とはいっても、帯揚げや帯〆、ぞうり・バッグといったものはお好みがあるでしょう。そういったものは、もし自分のお好みのものがセット内で見つからない場合は、少し追加料金を払えば変更ができる店がほとんどです。
振袖選びの基本は、まずはフルセットの振袖を、そしてお好みの小物がセット外なら追加料金を払ってが一番だと思います。それぞれ一点ずつお求めになると最後は高くなる場合がほとんどですよ。
あくまで参考!一般的な体系別おすすめ振袖の色と柄
一般的に、背の低い方は小さい柄の振袖、背の高い方は大きい柄の振袖が似合うといわれていますが、必ずしもそうならないのが振袖です。お嬢様の雰囲気に合う振袖が一番似合う振袖です。ですから、一般的な意見に惑わされず、どんどん着てみたい振袖を試着なさって一番似合う振袖を見つけて下さい。
でも、初めてだから分からない、一応の目安が欲しいとお考えの方に、あくまで参考として一般的な体系別に合う振袖の選び方をご紹介しておきます。
体型 | ぽっちゃり | ほっそり | 背が高い | 背が低い |
色 | 寒色系 ダークカラー |
ソフトなパステルカラー | ・太めなら ダークカラー ・細めなら パステルカラー |
・太めなら ダークカラー ・細めなら パステルカラー |
柄 | 縦に流れるような動きのある連続柄。 | ハーフトーンの小柄蚊〜中柄の目立ち過ぎない柄。 | 全体に柄の入っている腰高の柄。 | 縦に流れるような小柄で少なめの柄。 |
ポイント | 無地感覚の細かい柄の帯で縦のラインをつなげて! 襟元を白の半襟ですっきりまとめて! |
帯・帯揚げ・帯締めも振袖になじむ淡い色を! 花刺繍の半襟で襟元をボリュームアップ! |
帯幅を広めにとって! | 同系色の帯で帯幅を細く! 半襟は白を選び、伊達襟も同系色に! |
とりあえず上記を取り上げてみましたが、参考になりますかどうか・・・。
通常、背の高い人には大胆な大柄が、小柄な人にはやさしい色や柄が似合うとされていますが、若さの象徴ともいえる振袖ですから、体形にこだわる必要はありません。それよりも気に入った振袖を選ぶことです。基本的にはそれが最もお嬢様に似合う振袖です。飽きもきませんしね。若い人は何をお召しになっても似合います。好きな振袖をお召し下さい
振袖を選びに行かれる際の注意点
今までお話したことをまとめると、以下のようになります。これから振袖を見に行かれる方は、頭に言えておかれるといいと思います。お嬢様が素敵な振袖とお出会いになりますように!
・どんな振袖を試着してみたいか、イメージを決めましょう。
・お店にはシンプルな服装で出かけましょう。洋服の上から試着していただくのでふんわりした洋服は避けられた方がベターです。髪の長いお嬢様は、束ねて下さいね。
・振袖を試着する際は、鏡の前から2〜3メートル離れて全身を写して顔立ちが白く美しくはっきり見えるものがおすすめです。あせらずゆっくり選びましょう
・プレタ(仕立上りの振袖)の振袖を選ばれる際は、袖丈があっているか必ずチェックして下さい。昨年の成人式前に袖がするといってデパートで購入された振袖の相談を受けたことがあります。背が低いお嬢様は、要注意です。
・まずお店に行かれたら、振袖をご覧になる前に予算をお伝えになる方がいいと思います。理由は、何でもそうですが高い振袖の方がいいからです。いい振袖をご試着なさってから、予算に合ったものを試着なさっても、いまいちと思われることが多いです。予算内で気に入った振袖を探そうと思われるなら、最初に予算を店の人に伝える、これポイントです。
・振袖をお召しになる機会は成人式に限りません。女性の大学進学率・結婚適齢期の上昇によって、卒業式・謝恩会、披露宴・パーティーとお召しになる機会は以前よりも増えています。その点をお選びになるときに考慮され、おおよそ7~8年はお召しになれる色合い・柄いきの振袖をお選びになることをおすすめします。
私どもが古典柄の振袖にこだわる理由
ここまでお読み頂きありがとうございます。少しは振袖や振袖の選び方についてご理解いただけたでしょうか。この小冊子がお嬢様の振袖選びのお役に立つのであれば嬉しい限りです。
最後に私どもの店は古典柄と作家物の振袖にこだわっている理由を説明させていただきます。
それは、振袖という衣装は、お家で代々受け継がれていく衣装だと考えているからです。お母様の振袖をお嬢様に、そしてその振袖をお子様へと受け継いでいっていただきたいからです。
振袖の柄を大きく分けると、古典柄とモダン柄に分かれます。
古典柄は、奈良時代に外国から伝わってきた文様や、日本独自の文様で、各時代を経て現代へと受け継がれてきた伝統的な文様の総称です。有職文様や吉祥文様などがあり、きものや伝統工芸品、日本画などに昔から用いられています。
披露宴のお色直しでも
お召しいただける格調高い柄です
古典柄は、源氏物語に代表される絵巻物を題材にそれを模写したものなどが主流で、流行に左右されることなくいつの時代もお召しになっていただける振袖の中の振袖です。
一方、モダン柄は伝統的な古典柄をアレンジして今風に表現したり、幾何学的な模様を組み合せて斬新な柄つけをしたもの、薔薇や蘭など和花ではなく洋花を描いた斬新な振袖などがあります。モダン柄の振袖は、洋服のデザイナー、芸能人が創ったものなどが主流となっています。
白地にバラ
今年はやりの洋花を
大胆にあしらった振袖
ここ数年振袖のパンフレットを見ると、圧倒的にモダン柄の振袖が多いです。確かに色鮮やかで一見派手で華やかに思えるかもしれません。それに比べてパッと見では古典柄の振袖は地味で野暮ったく感じられるかもしれません。しかし、実際に試着されると、モダン柄の振袖の色使いがきつすぎたり、野暮ったいと思っていた古典柄の振袖がとても上品でお嬢様の上品な雰囲気を一層引き立てくれる場合が多々あります。
私ども数年前までは、モダン柄の振袖を扱っておりました。しかし古典柄を中心に古典柄と作家物の振袖を扱うことにしました。理由は、この章の最初にも書きましたが、お求めいただいた振袖をお家で代々受け継いでいっていただきたいからです。
最近は、お嬢様のお嫁に行かれる年齢も高くなり、振袖をお召しいただく期間も長くなりました。例えば、5年後にお求めいただいた振袖をお友達の披露宴でお召しいただくとすると、芸能人の○○さんがデザインした振袖はその時○○さんが消えていたり、流行のデザインが変わっていたりすると古くて時代遅れの振袖になってしまいます。それに対して古典柄の振袖は、ほとんど柄や色使いも変わることなく、新しい物が売られています。ですから何年たっても古い振袖、時代遅れの振袖といったイメージにはなりません。
白地に金刺繍の梅を
あしらった豪華で上品な振袖。
前身頃が豪華です
フルセット販売や加工技術の進歩により振袖が安くなったといっても、高価なものです。せっかくお求めいただくのですから、私どもでは、いつまでお召しいただける、「○○さん、いい振袖だね。」と言っていただける振袖を販売していこうと決め、古典柄と作家物にこだわるようになりました。
決してモダン柄の今流行りの振袖が悪いと言っているのではありません。私どもはお求めいただいた振袖をいつまでもお召しいただきたい、いい振袖と言っていただきたいからこそ古典柄にこだわるのです。
長々となりましたが、皆さんの振袖選びの参考になれば嬉しい限りです。
ありがとうございました。
にしよ呉服店
五代目西澤和馬